自転車のポジションと空気抵抗の関係

(クラス内での)研究の発表も終わり(年次全体発表に抜擢されましたが)、落ち着いたのでこちらにも記事を起こしておこうと思いました。

1.空気抵抗について
抗力(こうりょく)は、流体(液体や気体)中を移動する、あるいは流れ中におかれた物体にはたらく力の、流れの速度に平行な方向で同じ向きの成分(分力)である。流れの速度方向に垂直な成分は揚力という。
Wikipediaより
空気抵抗の場合は流体が気体(空気)です。
だいたい高校物理(自分はとっても苦手)くらいのレベルでしょうか?要は走ってる時に感じる空気の壁みたいなアイツです。
こちらのサイト様からデータをお借りしますと、自転車で走る上での抵抗は

巡航15km/hの場合

  • 機材抵抗:1W(4.5%)
  • 路面抵抗:10W(45.5%)
  • 空気抵抗:11W(50.0%)
  • 総仕事量:22W(100.0%)

巡航30km/hの場合

  • 機材抵抗:4W(3.5%)
  • 路面抵抗:20W(17.7%)
  • 空気抵抗:89W(78.8%)
  • 総仕事量:113W(100.0%)

巡航70km/hの場合

  • 機材抵抗:47W(3.8%)
  • 路面抵抗:48W(3.9%)
  • 空気抵抗:1125W(92.3%)
  • 総仕事量:1220W(100.0%)
となっており、30km/hの時点で全抵抗の約8割が空気抵抗です。で、自転車なんかより乗り手の方がめちゃくちゃ空気抵抗を受けてます。

じゃあ乗り手の空気抵抗を減らせればいいんじゃないか。と考えたのが今回の動機です。

空気抵抗は
で表されます。

D:効力(ここでは空気抵抗)
ρ:流体密度(今回は一定と仮定)
V:流体との相対速度
S:代表面積(前面投影面積)
Cd:効力係数

単純に考えてDを小さくするためには、ρ・V・S・Cd、のどれかを小さくする必要があります。
が、魔法使いじゃないのでρは変えられませんし、速く走りたいのでVは落とすどころが上げたいです。頭の悪い自分にはCd値をなんとかしようにも理屈を理解しきっていないので「???」って感じです。
消去法的に前面投影面積Sを小さくするという結論に至りました。

2.ドロップハンドルとフラットバー
クロスバイクとロードバイクの違い、最も大きな違いはハンドルの形状でしょう。
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ロードバイクが速いのは、そりゃフレーム、タイヤ、ホイール、コンポーネントといったトータルバランスが良いからなのでしょうが、所詮エンジンは人間です。
その上ミストラルさんは既にタイヤホイールがロード用の物に換装済みです。
で、コンポの交換だけであれだけ差がついてしまうのもにわかに信じがたい。
そしたらドロップハンドルしか思い当たる節がないのです。そこでさっきの空気抵抗を考えると…
前面投影面積です。前傾姿勢になるので前面投影面積が小さくなります。
昨日極寒の中、お友達の家に行って少し撮影をさせてもらいました。
フラットバーとドロップの下ハンでこれほどまでに姿勢が違ってきます。
正面から見るまでもなくドロップハンドル(下ハン)の方が前面投影面積が小さいです。
※この写真は時系列的にデータを取り終えた後の物で、フラットバーはステムとハンドルを交換し、ブラケットポジションに近づけるようセッティングしてありますが、それでもまだ前傾は緩いです。実験時はさらに背中が立っており、とても前傾とは言いがたいポジションでした。

これはドロップハンドルとフラットバーの違いについてもデータを取るしかないと思い立ち、これらもデータを取りました。

3.実験概要
ただひたすらデータを取るのみですが、肝心の前面投影面積を計測していませんでした。
「まぁ速度でどれが小さいかわかるでしょ」なんて甘い考えでやりましたが後々後悔しました。

それはさておき…
  • 概要
斜度10%(角度にして5.7°)、350mの坂を下り、残りの平坦100mを慣性で走行、その間の最高速度をデータとして記録します。
そのデータをポジション毎に分け平均化し、比較します。

その後、下りでのデータをもとに、フラットバーのみ平地でもデータを取りました。

  • 実験に使った場所
わかりにくいですが、斜度10%の坂を下りました。距離は350m、終端速度を計測するには距離が足りませんが、同じ距離でも空気抵抗が小さければ最高速度は速くなるんじゃないかな、と思いここをチョイスしました。
平地はここ(身バレ防止のため敢えて霧の中をチョイス)で全開走行(もちろん車道にて)を、通学時1ヶ月と少し、15日ずつノーマルとエアロもどきで行なってデータを取りました。

  • ポジションと計測方法
上から

①フラットバー エアロポジションもどき
②フラットバー ノーマルポジション
③ドロップ 下ハンポジション
④ドロップ ブラケットポジション

の4種類のポジションで計測しました。
クランクは3時と9時の位置で固定して
下り切った時点で、このキャットアイの有線サイコンで計測した最高速度をデータとして記録しました。

  • 実験車両
フラットバー:GIOS MISTRAL
ドロップハンドル:GIANT escape R3
どちらも計測時はフェンダー、バッグ等は取り外しました。ギアはアウタートップ(回さない)。
タイヤ、ホイールはミストラルのもの(カンパのシロッコにピレリのピーゼロ)で固定。
フレームの違いは殆ど誤差だろうし、オーナーの体格がほぼほぼ一緒なのでポジションもフレームサイズも同じくらいなので助かりました。重量もだいたい100g程度の差しかなく、誤差の範疇です。

そもそも高校生レベルの実験で厳密にポジション以外の全ての条件を固定なんて(ry

4.仮説
①フラットバー エアロポジションもどき
②フラットバー ノーマルポジション
③ドロップ 下ハンポジション
④ドロップ ブラケットポジション

を、速い順に並べ替えると

③>④>①>②になるのでは?と仮説を立てました。
余談
何度も言ってしまいますが、当時はミストラルのステムが短く、ハンドルが近かったため、前傾が緩かったです。エアロポジションもどきでようやっとブラケットポジションくらいかな、という感じでした。
今だったらエアロポジションもどきの方がブラケットより速いかもしれません。
まとめると、前面投影面積が小さくなるほど最高速度は速くなるという仮説を立てました。

5.結果と考察
結果です。
縦軸の単位はkm/hです。

1枚目が最高速度の平均値、2枚目は全データをまとめた箱ひげ図です。drop1というのが下ハンで、2がブラケットです。
4ポジショントータルで800回くらいデータを取ってましたので誤差があってもある程度均されてると思います。

意外だったのが、フラットバーエアロもどきの最速記録(箱ひげ図参照)が、ドロップのブラケットより速かったということ(まさか誤差?)で、それ以外は概ね仮説通りでした。
最速の54.2km/hを記録したドロップ 下ハンに関しては胴体と路面がほぼ垂直になるほどの前傾姿勢だった
ので、フラットバーに比べてかなり前面投影面積がかなり小さくなっていたと考えられます。
また、フラットバー ノーマルとドロップ ブラケットでここまで差が出たのは、ヒジの開き具合で、幅580mmのフラットバーと幅400mmのドロップハンドルでは天と地の差があったのでしょう。

次に平地での結果です。
平均でだいたい2.5km/hの差が出ました。なんだこれ。

こちらに関しても下りと同じような考察が出来ます。

6.まとめ
以上より、前面投影面積の違いで同じパワーでも大きな差が生じることがわかりました。
また、ドロップハンドルは殆ど同じようなフレーム(=クロスバイク)であっても速いので、この結果からクロスバイクのドロップハンドル化は大いに効果があると考えられます。
本来の目的では無いのですが、これでクロスバイクのドロップハンドル化も肯定出来そうな気がしてきました(対費用効果除く)。


以上です。小、中学生の夏休みの実験みたいなレベルの低さでしたが、今後は前面投影面積を計測して、さらに細かなデータを取っていきたいなぁと考えています。


じてんしゃにっき

2016 6/12 GIOS MISTRALを納車。 2018 8/3 ORBEA aquaを完成。 2019 6/15 GIOS AEROLITEを納車。 その後の行動や構想を自由に書き綴るサイトです。 移行作業(手動)、諦めました。

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